しかし近頃感じるのは、愛されたいという欲望

セックスの描写が映画のトレーラーで流れていても羨ましいと思ってしまう

愛が介在しているかどうかはトレーラーなんぞなので、わたしが判断する材料には幾分が欠けているが

愛を渇望している

わたしは愛を渇望している!

高校の冬、あの頃の燃えるような恋がしたい

手に入れられない、手に入れたい、どうやっても相手はわたしよりも劣っていて、しかし彼には魅力があった

顔だ。また骨格。

もし、あの地震のあと。某夢王国で外で長時間待たされ、ダンボールとゴミ袋で寒さをしのぐことがなかったら。寒いだろう。女の子なんだから冷やさない方がいい。でも配る数もなさそうだから、なら一緒に入ろう。無料でケープを配っているとの触れに、わたしが反応をし、(彼はネットで情報を集めていた)ごめん、1枚しかなかった、2人ではいろうといったとき。彼は、わたしよりずっと震えていた。冬の外で、寒くないわけがなかった。マーメイドラグーン前の、不気味な像から流れる人魚の声が、未だに流れていて、わたしは今でもあの声をきくとあの時分を思い出す。

閑話休題

彼は自身が震えているにもかかわらず、2人で使おうというわたしの申し出を断った。

女の子は冷やしてはいけないよ。わたしに、ポンポンのついた前縛りを結びながら、彼は言った。二人は足には支給されたビニール袋を巻き、わたしは寒さに耐えられるけれど、本当に死ぬほどこごえていたわけではないので、無理に震える振りをした。彼はわたしを、寒い?と気遣い、抱きしめるなりなんなりした。彼はわたしよりも震えていた。彼は、わたしよりもずいぶん線が細い。

優しさが心に染み入って、大切にされているような気がして、しばらくときを過ごした。

やっと建物の安全確認がとれたので、所定の場所ならはいっていいとのディズニーからのお触れがでた。

やはりわたしたちと同じような人種は山ほどいる。わたしたちがやっとたどりついたレストランは、机は難民で溢れかえり、床もそうであった。そもそも床でわたしが寝るなんてありえないのだが、寝床がないのなら仕方がない。とはいえ場所がないのだから諦めないほかにはない。

結局外で彼とイヤホンをさして、音楽を聴きながら、わたしはなにも考えないでいた。ただただ寒かった。がさりと脚をつっこんだビニール袋が、わたしが動くたびに耳障りな音をだすのと、難民が目の前で歩いたりするのと、耳から聞こえてくる安い音楽しかわたしにはなかった。

一方彼はわたしのことを気遣った。寒い?平気?と何度となく気遣った。そして、額に手を当て、熱い!といい、それからわたしが隣にいるのにiPhoneをいじっていた。わたしは地を眺めていた。または行き交う、寒いと言う人。

 

彼はわたしにぱっと向き合い、ボランティアがいるらしいからそこへ行こうと提案した。

ふかみちゃんは熱がでているし、僕もこのままここにいるのは得策ではない気がする。だから。とわたしは言われ、そうだなと相槌をうち、合点がいったので夢の国を後にした。

惨状だった。夢の国こそはなんともないようにみえたが、一歩出ればずいぶんとちがった。多少の液状化とそれによる道のふさがりくらいではあったが、外に出ると悲惨だった。

しかしそれから道中歩いていると、液状化で濡れているし、電柱がまがっている。地面が割れている。地面がずれている。ひとっこひとりいない。わたしが脚をふいに踏み外したとき、彼は抱きとめてくれた。

道中、わたしを案じてか、くだらない話をしたのを覚えている。

着いたのは一軒家だった。家主らしいお兄さんに彼が挨拶をして、彼女が熱をだしたので看病させてくれと。さすがボランティアをかってでる男。二つ返事で了解した。

リビングに人が見えたので、挨拶をした。同じ境遇の人間だった。大変ですね。熱をだしたそうで。大丈夫ですか?とわたしを気遣ってくれていた。その間もTVはせわしなく東日本大震災の惨状を流していて、彼らといえば、おのおのブランケットにくるまったり、あぐらをかいたりして、くつろいでいた。

わたしは2階に通された。風邪薬などをいただいて、眠りについた。一応記しておくとベッドは2つあった。わたしは彼に背を向けて寝た。

起きたら不調は治っていた。ただシャワーに浴びていないので、どろどろだったのだが。目覚ましもかけずに寝たのだが、おきたのは早朝らしい。

カーテンを開けたのをよく覚えている。ベッドの間にある、小窓だ。みると、遠慮がちに太陽がのぼっていて、それと、犬が見えた。

一言二言彼と電車の話などをして(復旧するかどうか)、彼はわたしの額にはりついた髪をはらった。汗?ときかれ、うん、と答えた。彼は微妙な顔をした。

彼はわたしの寝ていたベッドに腰掛けた。不穏な空気は流れているのを感じてはいた。彼は膝から内腿にかけてするりと指を入れた。そういえば彼は色情魔だった。わたしは処女だし、なによりここは他人の部屋だし(これはあまり関係ないが)、そもそも色情魔にくれてやる処女はなかった。わたしは、彼とはしたくなかった。やんわりとのぼってくる指を止めると、彼は「だめ?」とは一度聞いたが、意外とすんなりと引き下がった。

 

その後、ボランティアの方に感謝をし、ボランティアのひととツイッターでそこそこの話をし、風が吹くように彼の存在は薄れた。

ただ一緒にいた彼もおなじようにうすれていった。

関東大震災という大きな事象に、彼はわたしよりも重たく受け止めていて、でもわたしのことは尊重はしなかったようである。

あくまでわたしではなく、女の子としてわたしを見ていたように思う。

予想できるだろうが、彼とはまあいざこざがあり、結果としてはわたしが身を引いた。

わたしはこれでいいんだと思った。

しかしそれだけではなかった。わたしを好きだと言う男が別に居たからである。

もちろんプライベートなことは言わない。言う必要もないと思う。

しかし二股するつもりも毛頭なかった。わたしは彼とは清純な友人簡潔?を築けると思っていた。あ、付き合ってといわれて快諾したような気もする。わかんないや。4.5年前の話だし。

わたしはとやかく自分を好む人間には甘い。しかしのさばらせる癖がある。愛されたいのだ。会うと、愛されているような気がしてしまう。

結局その第二の彼は、わたしが大震災の際に男と居て泊まったということが、彼にとっては浮気になるらしく(ボランティアの家に泊まるんだから浮気もなにもないと思うんだが)浮気は困ると離れていった。話していると楽しいと言って、10近く離れていたわたしにも平等に付き合ってくれる、ある意味わたしにとってとても「よい」ひとであった。ただキスが下手な男だった。女性経験についてはあまり覚えてないけど、ガッサガサならリップクリームもひとつくらい塗ってほしいものである。まあ前者も下手だったんだけれど。

前者はセフレが居るそうだった。なのにキスが下手なのだから、お察しである。

 

そんな激しい、歪んだ男2人に挟まれていたんだから、わたしは大恋愛を経験したと思っている。

思えばあの頃から第二の男の香水を探しながら歩いているような気がする。惜しい男を逃したか。

 

わたしにはそれだけの価値がある

価値があると言い聞かせることしかできない

自分が嫌いだからだ