す
すべて思い通りになると思っていた
異性同性関係なく、手中に収めることは、本当に容易いと、経験から、思ってしまっていた
しかし最近手に入れられなかった自分への失望と相手への見る目のなさ、相手の聡さに気づいてから、わたしには手に入れられないものもあるのだと気付いた
しかし最近は、手に入れられないことに悦びを感じつつある
手に入れてしまったらそこで終わりだ
セックスをすればそこで終わってしまう
セックス以上の、イデアのような心の結びつきが欲しいと渇望していた頃もあった
今もある
このまま溶け合って思考も2人の世界で飽和して、すべてがすべて、わたしたちふたりでふたりがひとつ、ひとつのなかにふたりがいる
この互いの邪魔くさい髪も皮膚も爪ももすべてとりはらって体という枠を超越した、神めいた存在になりえたいと望んだこともある
だがそのつもりで触ると痛いという
血を舐めればひとつになれるとはいうがあくまで身体的な問題で心象には全く及ばない
境界線をつくらなければならない
境界線をわざわざぐらつくのも、楽しいと最近はやっと思えてきた
阿呆らしい、手に入れて、手に入れたという満足感に浸って、まあ自分が浸ってしまえば相手はもうどうでもよい
手に入れてしばらくは浸っているがそれ以上はない
時間が経てば愛は薄れるし執着も薄れる
なにより手に入れたという悦びがうすれる
かつてわたしは彼女、彼に慇懃無礼な態度をとっても許されていた
しかし離れず側にいたいなどと言う
もちろんこの一連の流れから帰結するのは、わたしにはそれだけの価値があるということだ
それだけのことである