おはようございますの挨拶を言い訳に、今も当時も最も尊敬している先生に話しかけることが、毎週水曜日(だったか)の楽しみだったんだけれども、初めて挨拶をしたときは先生も半ば驚いた風だった(予備校の生徒は先生を道具として扱う面がどうしてもあったから、仕方のないように思う)

 けれど日にちを重ねるごとに、だんだん先生から挨拶とお辞儀をしていただけるようになった 先生はとても偉大な方で、まったく常人とはかけ離れている方だったからわたしにはとても嬉しかった

 ある日、廊下でたまたま会ったんでいつも通り笑顔をもっておはようございますとなげかけたら、どうやら浮かない顔をしていたらしい先生はぱっとこちらに顔をあげて、おはようございます!と笑顔で会釈をしてくれた

 職員室にあたるスペースで同僚と(長年付き添ってきているはずなのに)世間話をするのがどうにも苦手で面倒くさいと言っていた先生は、職員室の居心地が悪くて苦手だと語っていて、いつも職員室にはいっても黙ってチョークのついた手を流したり、新聞を読み始めたりしていた

 けれど、その日はわたしと挨拶を交わしたあと、職員室へといき、すでに定位置に座っている職員たちに向かって晴れやかな声で「おはようございます!」と言ったのだ